京都こども六斎教室連絡会
桂こども六斎
2020年8月、桂こども六斎の練習を訪問しました。
●インタビュアー
テンテン
大学の研究課題で六斎念仏に出会い、日夜研究に励んでいる。
●聞いた人
宮川徳三郎さん
京都で着物屋さんを営む傍ら、
子どもたちに六斎念仏を教える。
子どもたち
小学校1年生~6年生。
今日は11人が頑張っていました。
保護者のみなさん
子どもたちの応援に駆けつけて
お話をきかせてくれました。
今回は、桂こども六斎さんにおじゃまします。
毎週水曜日、下桂御霊神社の能舞台で練習をされているということで、やって参りました!
まずは、桂地蔵前六斎念仏を復活させた中心的人物である宮川徳三郎さんにお話を伺いたいと思います。
こんにちは~。
よろしくおねがいします。
どのような経緯で、六斎を復活されたのですか?
幼い頃から六斎念仏に親しんできた私と中村隆兵くんが中心となって、令和元年5月に14年ぶりに復活させました。
地域に残っているかつての先輩たちにも声をかけ、練習するようになりました。
まずはしっかり過去の事を思い出し、それから昔の記録映像なども見つつ練習を始めました。
なるほど!
今日はこども教室の日ということで、子どもたちがたくさん来て練習していますよね。子どもにも教えようと思ったのはいつからですか?
そうですね~、復活を考えたとき、自分の娘たちが大きくなってきたことで、六斎がどういうものか知ってもらいたくなったんです。
まずは娘たちに簡単なお囃子を教え、その後、娘の友人、その兄弟などにも声をかけてもらって本格的に始めることになりました。
今ではさらに広がって、約10名の小学生に教えています。
子どもたちに教えよう!と思ったきっかけは何だったんですか?
子どもの頃に地域の芸能・文化に親しんだことで、自分の住んでいる地域に興味を持ってもらえるきっかけになると思ったからです。
もちろん、今の子どもたちが大きくなったら進学や就職でいなくなってしまうかもしれない。でも、今の子どもたちの演技をみて、かっこいいと思ったり、興味を持ってくれる友達や後輩がまた参加してくれるようになったら、未来に伝えていくことができると思ったからです。
親から子どもに、ずっと継承されてきたものを守り伝えてほしいですね。
継承というと、伝統や歴史についてはどのように教えているんですか?
伝統のことをしつこく説明しても、小学生が理解するには非常に難しいです。
ただ、それぞれの演目が、なぜ桂の六斎で演じられていたのか、演目のもっているストーリー性、背景はしっかりと伝えるようにしています。
まずは演じる上で背景をイメージしてもらえる事を心がけています。
なるほど!演技で子どもたちに教えるポイントはありますか?
披露する達成感を感じてもらい、頑張ればヒーローになれるんだという自信を持ってもらうことです。
そのために、満足がいく演技ができたら認めて、褒めてあげることで、成長していくことを期待しています。
それから、これはなかなか僕たちにとっても難しいのですが、しっかりと、かっこよくキメることを伝えています。桴(ぶち)の構え方や、躍動感のある演技には、キメポイントがあると教えています。
自信につなげる指導が大事なんですね。
でも、だからといって、一人だけが抜群に上手い、とかはだめです。
六斎はみんなで一つの演技をするわけですから。
みんながヒーローになれる場所が六斎なんですね!
逆に、教えていて子どもたちに気付かされたこと等はありますか?
たくさんありますよ!
指導する側の熱量を、子どもたちはよく感じているので、教えていても誤魔化したらすぐにバレます、、、
指導する側も試行錯誤なんですね、、、
これまでに困難に直面したことなどはありましたか?
復活が令和元年5月で、桂地蔵前六斎の奉納公演は8月。3ヶ月の練習で披露というわけにも行かず、ただ練習を重ねるだけの日々でした。
そのときは、成果を披露する機会もなく、見通しがたたずにみんなの気持ちがなかなか一つにまとまりませんでした。
どのようにして乗り越えたのですか?
その年の11月15日に、「西京区民ふれあいまつり」というイベントのオープニングに六斎の披露を依頼され、それに向けてみんなで一丸となって練習に取り組めたことが大きかったです。
その頃から、本格的に軌道に乗ったなと思えるようになりました。
発表の場が自信につながったんですね!
その通りです。
それから、困難というと、小学生はどうしても集中力が続かない。
そんなときは、しっかり怒って指導もしますね。
こういう厳しい指導も、子どもたちや保護者の人たちと普段から地域ぐるみの付き合いをしているからこそできているものなんでしょうけれども。
日頃のおつきあいが、指導の仕方に大きく関わるということですね!
今日はいろいろありがとうございました。
〜 子どもたち 〜
つづいて、子どもたちにも聞いてみたいと思います。
この教室に参加しようと思ったきっかけはなんですか?
お父さんにさそわれて始めました。
友達に誘われたからです。
六斎のどんなところが楽しい?
自分の思う通り、ミスなく太鼓を叩けたときです!
楽しくできたとき。
じゃあ、なんの演目がすき?
四つ太鼓!
娘道成寺!
やっぱり基本の四つ太鼓は一番人気なんだね!
娘道成寺は渋いね!どうして好きなの?
お面を被ったりしてカッコいいからです!
じゃあ、逆に苦手な、難しいことはなに?
覚えることが難しいです。
そうなんだ。でも、一年半でこんなにたくさんの演目を覚えたんだから、すごいな~。
あれ、みんな箒や雑巾を持ってきたけど、どうしたの?
練習が終わったら、いつも神社を掃除します!
掃除も楽しいです!
すごい!
練習場所の神社も、自分たちの町の大切な文化。
率先して掃除をしている子どもたちの姿がとても印象的でした。
みんなすごくパワフルで、これからどんな教室になっていくのか楽しみです!
~ 保護者の皆様 ~
最後は、保護者の方にも伺ってみたいと思います。
録再を子どもにさせたいと思った理由を教えてください!
中心メンバーの中村さんたちのお子さんとうちの子が仲良くさせていただいていたので、六斎に誘われて、自分もやってみようと思ったようです。
私はもともと桂が地元ではなかったのですが、地域に根ざした行事に関わるというのは、子どもにとって大切なことだと思っていたので、参加してくれて良かったです。
今の学校教育は、国際社会を意識して英語やプログラミングなど外国からのものを学ばせていますが、まず自分の生まれ育った日本のことを知っているということも大事だと思います。
それが子どもたちにとってグローバルな社会であるからこそ、必要なことだと思います。
地域の伝統を知り、関わることの大切さを六斎を通じて学んでほしいですね。
お子さんが実際に参加されてみて、どうでしたか?
まず、地域の方々との交流が生まれました。
たとえば、今日のように練習をしていると、お囃子の音色を聞いて地域の高齢者の方々が声をかけて応援してくれたりします。
地域貢献として関われるので、とても良いことだと思いました。
地域交流の場になっているんですね。
子ども自信の変化や成長につながったことはありますか?
六斎は、いろんな世代の方々と一つの演技をするわけですから、練習といっても子ども扱いはしてもらえません。真剣に学ばないといけないので、責任感というか誇りというか、そういう自覚が生まれているように思います。
それと、精神力も鍛えられてきたと思います。厳しいときには厳しく、楽しいときは楽しく。友人や先輩後輩と競いながらも、無理なく楽しんでいるので、そうやって伝統を継承していってもらえたら嬉しいです。
(宮川さんの言っていた、自分がヒーローになれるという自信を持ってほしい、という教え方が子どもたちにつたわっているのかも)
結論を早く出すことが大事にされる中、六斎は結果をすぐに出すことはできないけれど、子どもたちはもっと上手になりたいという気持ちを持って、自分たちで目標を決め、それを乗り越えようと努力してます。
そういう小さい頃の経験は、大人になっても自分の根っこに残るのではないでしょうか。
目先の結果に左右させず、コツコツ地道に努力を続ける方法を身につけるということですね!
あと、練習をしたいからと言って、宿題を早く済ませてくれるようになったのが助かります!
そんなところにまで恩恵が!
みなさん、ありがとうございました。
保護者の方たちも、とても関心を持ってこの教室をみているんですね。
桂こども六斎教室は、地域に住んでいるいろんな立場の人たち、みんなが一丸となって六歳の継承を考え、取り組んでいる。そんな教室でした。
最後に練習の様子の動画をお送りして、今回の教室訪問を終わります。